投稿者アーカイブ: 藤丸 直行

後継者の育成その4

 上棟の前日は眠られなかった事でしょう、墨付けをした人はどんなに熟練工でも前日は眠れないのが普通、間違いが少なく無事に上棟まで行けるのか責任がある、私は間違いや勘違いも心配になるが、なんと言っても高所での作業怪我や事故がなく無事に上棟式が出来ることが何よりも嬉しい…当たり前の様に思うが前日は眠りが浅い、(怪我や事故を少なくする為に手づくり・手作業のすまいづくりを始めたといっても過言ではない、何故なら「ふじまるのすまいは手づくり」で行う、化粧の柱や化粧の横架材・化粧の桁ばっかり、一本の角材に多くの人の手と時間が掛かるから最後まで「大事に扱う」という意識が必然と生まれる、それが怪我や事故を無くす1番の良案であり、せっかくこの道に入った若者五体満足の棟梁に育てて卒業させたい一心からです。)上棟の日は朝5時起きが多い、一度も目覚ましや起されたことはない、自然と目が覚めるのが習慣になっている。

 朝7時前(この上棟時間は彼等の責任感から始まったもの)に現場着、すでに棟梁達は段取りをしていた、荷物を下ろし終わったら、肩慣らしに柱を建てて行く15〜20分で建て終わる、それから墨付けした人を中心に円陣を組み朝礼、建て方の順番を墨付けした人が図板(自分で書いた図面)を見ながら説明をする、この時上手くいくようにと心で祈るのは私だけではない、責任感のある棟梁達は同じ心境になる,真剣に聞き入った姿を見れば一目瞭然に分かる、これが終わり安全祈願していよいよクレーンのブームが始動、最初の横架材が上から降りてくる、私は組柱1本を支え所定のホソ穴に柱ホソを差し込む、槌の音が激しく響く段々と収まってきた、ところが私が持っている柱が始まった最初の1本目で長いのが分かった、青ざめる又はじまったか…どれだけの勘違いが今から起きるのか…切ない気持ちが頭を過ぎる、組み立てる時は以外に危険性がない、間違いや勘違いがあって取り外す時が一番危険なとき、その危険な作業が1本目から始まった、硬直した面々の姿を見て、大声を掛けゆっくり怪我のないよう大事に外す指示を出す(本当は悔しくて罵声を飛ばしたくなるがこういう勘違いは決して叱ってはいけない、ぐ〜と堪える)、長い物は所定の長さにもっていけば殆ど使用出来る。

 さあこれからが大変、往ったり来たりの果てしない長い時間が始まる…。

共通の価値観

 

「後継者育成は一休み」 

価値のある、ふじまるの「すまい」とは、優秀な人材育成をもとに、すまい手のニーズや環境・あらゆるソフト面に対応し、なお優良な地域材を使用して地域への貢献・循環型のすまいづくり、急がず試行錯誤しながらじっくり育み、一生懸命に育成と共に建設するすまい、「気持ちを込めた木持ちの良い家」、どこにも負けない品質(技術力)や性能・感謝の心を目指した手造りのすまいづくり、そんなプロセスを大事にして完成した「すまい」、これがふじまるの価値ある「すまい」と思っています、この共通の価値観を持った、すまい手の方々や協力業者の皆さん方が本当のパートナーであり、ふじまると切っても切れない永遠に続く仲間たちであります、今後もこの価値ある、伸び行く「すまい」を建設し又維持管理をして行きたいと思います、ご協力をよろしくお願いします。

後継者の育成(建築大工)その3

 正直この時期3人同時入社は考えた、長くて3年前後の若者が2名で他1〜2年ぐらいが3名熟練工が一人、指導棟梁が育っていない時期にどうして指導すればよいか迷いつつ、新卒を入れる事にした、無理をして入れた結果は、数字を見れば一目散に解る、この時期一気に大工手間だけでも見積り金額(今より高い金額)の倍以上彼らに支払っていた、それに福利厚生費を考えたら大変な数字になる、勿論私たち夫婦の給料等は考えてもいない、それよりも若い人達が入って来るようになっただけでも努力のし甲斐があったと思っていました、この時期協力業者の皆さん達に必ず「恩返しをするから育成の協力」を呼びかけた、殆どの業者が賛同して頂き、ムダ・ムラを省く会議やCADを使っての上棟までのプロセス等の勉強会に集中し、もくもくと働き続けたことは言うまでもない。

技術面で一番困った事は、手づくりに要の墨付け作業(桁表し*構造材が全部化粧で見える状態)を覚えさせる事でした、木の上下や反り・強度・色艶・継ぎ手の位置・乾燥状態等間違いない様に墨付けする事は短い修行期間では至難の業、思い切ってさせて見たら間違いだらけで、穴があったら入りたい心境…こんな失敗の多い上棟が何回も続いた、当然失敗した木材は取替えなければならないから材料費や人件費が嵩む。

任せたいじょう間違っても叱るわけには行かない、基本をしっかりやっていればそんなに失敗はない筈、基本を守らない子には厳しく罵声も飛んでいた。

3年迎えたある日、40坪の住宅を「美根君墨付けをやって見るか」の問いに「は‥はい」の返事が返ってきた、まったく期待はせずに墨付け作業をさせた、様子を見ていたら2時間ぐらい何もせずただボー…と檜の土台の前でつっ立っていた、「一寸早かったかな?」それから夜中に様子を見に行ったら、黙々と墨付け作業をして、かなりの本数が終わっていた、あの輝いた目と姿勢は今でもはっきり覚えている、「これはいける」とお思いつつ、そしていよいよ上棟の日を迎えた…

後継者の育成(建築大工)その2

 チャリンコで来た女性は今一番長く居る「阿南 美根」棟梁といいます(棟梁で完工数46棟)、竹田高校を卒業後専門学校を出て医療事務をしていたらしい、「何で建築大工になりたいのか」の問いに「身体を動かす仕事がしたい…」この言葉しか記憶に残っていない、彼らには悪い表現をするが猫も杓子も入れたい、鉄砲も数打てば当たるそんな時期でした。

 入社時どんな事から指導をしていたか、この子だけは記憶にない、やりっぱなしと言う事もないのだが、覚えている事は大酒飲みで膝を組んで煙草を吹かしている(今は辞めている、酒は少々嗜む)状態が脳裏に焼け付いている、この子が入って酒盛りが急に増えた、朝えらいおとなしいと思ったら朝まで酒びたり…けど遅刻は一度もない、こんな根性の持ち主腕の方も確実に伸びてきていた。

 そうこう一年もしないうちに女性の大分工業建築課卒の子が入ってきた(神田真美棟梁今は設計部、棟梁完工数30棟)建築課卒は初めて、おまけに2級建築士免許を取得(今は一級建築士を取得)それから直ぐにもう一人(武津棟梁)上野ヶ丘高校卒・福大卒の子が入って来た、この三人は頭が柔らかく物覚えが早く何よりも競争心に満ちていた、神田棟梁は良く泣きながら歯を食いしばって頑張っていたし、武津棟梁は応用力がずば抜けてた、飲み込みも早かった。

この3人は性格の違いがあるが想いは一つにあると感じた、  当初彼らに言ったことは何でも良い大分県一を目指そう、元気の良い若者の集まり、「存在をアピールする、それには木造の欠点を打破する為に試行錯誤しながら、がむしゃらに働け」、こんな会社が今もあるのかといわれるぐらい日曜も休み(早く覚える為に)なく深夜まで働き続けた、もともと日本人は労働を美徳と考えた風習もあった、そんなお陰で仕事の受注は何とか伸びていったが新卒が初めて同時に三人入って来た、待っていたのは今までにない苦しい数字…

 堂村さん

 お久しぶりですその節は大変御世話様になりました。

  コメントありがとう、コメントの中からあなたの優しさが見られます、

 自由奔放、支離滅裂なブログに目を通して頂き感謝しています、私どもも今年二人の新入社員が入って来ました、私は彼らにまず一番に「怪我をしちゃ〜いかん」、会社や世間は利用されるのではなく、「利用しなさい」自分の本当の目的の為のツールにしなさいといっている、まだ18〜19歳理性は定まっていないような気がする、特に男性は女性より遅く感じる。

 自然の中での社員教育はうらやましい、木や森を育てるのと同じ時間がかかる、間伐や移植に依って廻りはのびていく、又人も同じ様な状態で伸びていく、

 皆が真直ぐ大きく育つ為には自然のものを見るのが一番良い、頑張ってください。

 近くに来たときには是非寄って下さい

後継者の育成(建築大工)

 後継者の育成(建築大工)を心がけて20年あまりが経つ、きっかけは熟練工のマナーやソフト面の悪さ、いくら言ってもその場は良いが、直ぐに自分本位になる、それにこれからの「すまい手」のニーズに対応できる頭の柔らかさ等、将来を見据えての行動。

 後継者の育成と言えば聞こえは良いが、今日まで支援や援助はまったくなし、一工務店が自力で育成するのは大変なこと、随分皆から反対された、それでも先々将来の事を考えたらどうしても育てなくてはならない、本当に大切な手加工・手刻み、手づくりのすまいづくり……木の文化の継承・不思議なやすらぎの木の住まい・増改築や古民家の再生リノベーション等。

 今まで自分がこの道一本でやってきたすばらしい職業と培ってきた技術すべてをこの世に残すべきと思った、当初は人集めに四苦八苦した、いくら募集しても実績のない一工務店には見向きもしてくれなかった、いろいろ手を尽くして、やっと入ったと思ったら直ぐに辞めてしまうこの繰り返し、何度諦めようと思った事か、とにかく人集めに閃いたことは男女問わず募集を行った事である、当時男女均等法が施行されない何年も前の事、(相乗効果の期待も…)すると女性が二人入って来た、一時の喜びで彼等も僅か一ヶ月足らずで辞めてしまった。長くても1〜2年で辞めて長続きしなかった、そしてある日現場で仕事していると一報が入って来た、「変った女の子がチャリンコで面接に来たから帰って来て」……容姿を見るなりびっくり、丸坊主に黄金の髪、ジャージ姿に鋭い眼光の持ち主、一瞬立ち止った記憶がある…その女性が今、ふじまるを支えている…