得てして神仏はいたずら好きである、さあ〜これからという最初の組立で、私が支えている柱や横架材の間違いや勘違いが今まで何度も最初からあった、幸か不幸か不思議なことが多かった、話は変わるがある日解体の現場で高さ3mの所から、ひょっとしたことから仰向けの状態で下に落ちた、落ちながら、「もうだめだこれで人生終わった」と思ったが、落ちた瞬間は分厚い布団の上にふわ〜とした感じで、スチール製の足場板の上に落ちた、腰などに何の異状はなくそのまま仕事を続けた大変幸運な出来事もあった、今回の上棟は心配をよそにあれよあれよの間に工事は進捗していった、無事上棟を終えると、今まで味わったことのない無量の感慨と「これからいける」という明かりが見えた、勿論小さな勘違いは数ヶ所あった。
チャリンコの阿南美根は最初の大仕事で、すばらしい墨付けや刻みをやってくれた、この現場で味わった自分との葛藤や喜びは一生忘れることがないでしょう、上棟後の美酒を皆と共に心行くまで味わったことは言うまでもない、(当時は週2〜3回皆で飲み事があり、飲みすぎで離婚問題までなった事がある)因みに2度目の墨付け・刻みは奇跡といっても良いぐらい完璧にこなした、今でも誰もが出来たことのない難しい事をやってしまった。
ふじまるのすまいの構造は殆ど化粧桁や柱材の表しが多く、精密さや緻密性が不可欠、その為に見えがかり部分の構造用金物は全て隠し金物としています、又木材が大きく量も倍使用し、丸太梁・丸柱・太柱があり墨付けや刻みが他社より相当困難、間違いや勘違いがあるのが普通。
この時期から阿南美根君の容姿や考えが変った、心身共に美しくなって来た、 墨付け作業等を彼にさせると、早く・きれいに間違いなくできるが、合理的な作業は一人前の後継者を育む上ではやってはいけない…とは言っても非常に苦しい数値の中、心は揺れていたが、目先の事を考えずに遠い将来を考えよう、第2の阿南を育てる事を心に誓い次なる人選を試みる、人選には当然就業態度や技術・その他を見ながら行った、この人選に想像もしてない人悶着が起きた。