後継者の育成(建築大工)その3

 正直この時期3人同時入社は考えた、長くて3年前後の若者が2名で他1〜2年ぐらいが3名熟練工が一人、指導棟梁が育っていない時期にどうして指導すればよいか迷いつつ、新卒を入れる事にした、無理をして入れた結果は、数字を見れば一目散に解る、この時期一気に大工手間だけでも見積り金額(今より高い金額)の倍以上彼らに支払っていた、それに福利厚生費を考えたら大変な数字になる、勿論私たち夫婦の給料等は考えてもいない、それよりも若い人達が入って来るようになっただけでも努力のし甲斐があったと思っていました、この時期協力業者の皆さん達に必ず「恩返しをするから育成の協力」を呼びかけた、殆どの業者が賛同して頂き、ムダ・ムラを省く会議やCADを使っての上棟までのプロセス等の勉強会に集中し、もくもくと働き続けたことは言うまでもない。

技術面で一番困った事は、手づくりに要の墨付け作業(桁表し*構造材が全部化粧で見える状態)を覚えさせる事でした、木の上下や反り・強度・色艶・継ぎ手の位置・乾燥状態等間違いない様に墨付けする事は短い修行期間では至難の業、思い切ってさせて見たら間違いだらけで、穴があったら入りたい心境…こんな失敗の多い上棟が何回も続いた、当然失敗した木材は取替えなければならないから材料費や人件費が嵩む。

任せたいじょう間違っても叱るわけには行かない、基本をしっかりやっていればそんなに失敗はない筈、基本を守らない子には厳しく罵声も飛んでいた。

3年迎えたある日、40坪の住宅を「美根君墨付けをやって見るか」の問いに「は‥はい」の返事が返ってきた、まったく期待はせずに墨付け作業をさせた、様子を見ていたら2時間ぐらい何もせずただボー…と檜の土台の前でつっ立っていた、「一寸早かったかな?」それから夜中に様子を見に行ったら、黙々と墨付け作業をして、かなりの本数が終わっていた、あの輝いた目と姿勢は今でもはっきり覚えている、「これはいける」とお思いつつ、そしていよいよ上棟の日を迎えた…

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